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(1)如来グループ

 大仏が属す。最も位が高い。
 企業の役職に例えると、社長、会長、名誉会長。
 如来は真理に目覚め悟りを開いたもの。如来以外は全て修行中。

 世界最初の仏像は釈迦如来。1世紀に作られた如来の一種。作られたのは釈迦の死後およそ500年後。それまで仏像はこの世には存在しなかった。

 しかし仏教の布教には仏像が必要だった。釈迦の姿を拝みたいという信者たちのラブコールに応え、釈迦は仏像となり釈迦如来となった。つまりお釈迦様の仏像が作られたのだ。
 歴史が下ってくるとだんだん仏教を信じる人の裾野が広がっていく。それによって、こういう仏がいたらいいなという庶民のニーズに応える形で様々な仏像が出てきた。

 その後、庶民の細かなニーズに応える形でも仏像が作られた。
 医療を中心にした薬師如来。極楽浄土の案内人として阿弥陀如来。阿弥陀如来は「南無阿弥陀仏」と唱えれば成仏できるという手軽さが受け、日本の寺院で最も多く祀られている。
 さらには太陽を神格化した大日如来など、経典に記された数々の如来が仏像となっていった。
 奈良の大仏は毘盧遮那(びるしゃな)如来を仏像にしたもの。鎌倉の大仏は阿弥陀如来。
 如来は釈迦が悟りを開いた姿を表したもので、その多くが座っていて、衣をまとっただけの質素な形。

 これらは仏像界の頂点に立つグループなのだ。

(2)菩薩グループ

 弥勒菩薩、観世音菩薩、地蔵菩薩(お地蔵様)。
 庶民から圧倒的支持を受ける。
 企業の役職でいうと部長など中間管理職。
 菩薩は悟りをめざし修行中。上を目指して修行しながら苦しむ人々を救う仏。

 菩薩とは、修行僧という意味の、古代インド語(サンスクリット語)のボーディ・サットヴァが元になっている。
 ちなみに、釈迦の次に悟りを開くとされているのは弥勒菩薩だが、悟りを開くのは56億年7千万年後。
 如来は難しい語り口で教えてくれるため理解しがたい。菩薩はそれを優しく説いてくれる。なので、菩薩の方がより身近。

 全ての人を救うには如来だけでは手が足りない。そのため、菩薩は如来の脇に立ち、如来とユニットで作られることが多かった。
 釈迦如来の脇には文殊菩薩と普賢菩薩。文殊菩薩は知恵を司り、普賢菩薩は修行を司る。「三人寄れば文殊の知恵」は、この文殊菩薩から来ている。

 如来が座っているのに対し、菩薩は動物に乗っていたり立っていたりしている像が多い。その理由は、菩薩は少しでも早く人々を救えるように。腰を捻ったり片足を踏み出してる像もある。
 他にも、菩薩は美しい布をまとい、多彩なアクセサリーを身に付けた姿。これは釈迦の出家前の王族時代の姿を現したもの。

 菩薩は俗人に近いため人気が出た。特に鎌倉時代以降、庶民信仰の中で人気に。
 それを象徴するのが観世音菩薩。優しそうな外見で人気を集めた。観音様はもともと男性でも女性でもないが、優しいイメージのため、いつしか仏像の姿も女性のイメージになり爆発的人気に。

 あまりの人気に、如来を差しおき単独で活躍することになり、さらに人々の欲望のままに変身を遂げ、二本の手だけでは救えないだろうと手を増やした結果、千手観音が生まれ、また、世界中をもっと見渡せるようにという十一面観音も。
 さらに、大船観音、高崎観音のように巨大化したものまで。

 寺まで行かなくてももっと親切な菩薩もある。アンパンマン顔負けに助けに来てくれる、それが地蔵菩薩。
 人々を助けるため自ら出向き、救いの手を差し延べ、ダメな人ほど救ってくれるという。

 なぜ親しみのある愛らしい顔をしているのか?
 地蔵菩薩は地獄に堕ちた人までも救ってくれるという。親より先に死んだ子は賽の河原で親不孝の責め苦を受ける。それを救うのが地蔵菩薩。そこで賽の河原から連想される石で作り、顔も子供たちそっくりの丸い形で作られるようになったのだという。
 上流階級がきらびやかな観音様に傾倒していく中、お地蔵様は身近さから庶民のアイドルに。

 地蔵菩薩というのは庶民のささやかな願いも聞いてくれる、身代わりになってくれるという信仰が強い。身代わり地蔵、とげ抜き地蔵、子育て地蔵などなど、全国さまざまなバリエーションを生んでいった。

(3)明王グループ

 歌舞伎の市川海老蔵が結婚を報告した成田山新勝寺のご本尊は不動明王。
 が、不動明王はなぜ怒っているのか?

 京都の東寺の講堂には、不動明王を中心とした四体の明王が。東に降三世明王、南に軍荼利明王、西に大威徳明王、北に金剛夜叉明王。不動明王とあわせて五大明王。
 しかしこの仏像、他と違いみんな怒っている。なぜか。

 明王は密教で大日如来の化身・分身。特に明王が救うのは難解の衆生(なんげのしゅじょう)、すなわち、いくら言っても聞かない人。

 大日如来が変身して悪を懲らしめる、これが明王。
 明王は激しい煩悩を背後の炎と剣で焼き尽くし、左手の縄で縛ってでも救うという。慈悲の心ではなく怒りで仏教界を守る、いうなれば闇の仕事人、裏のガードマン。

 平安時代に弘法大師が中国に留学して密教を学び、不動明王を持ち帰った。当時の人々は非常に衝撃を受けたと伝えられている。武力でもって力尽くで人を救う。
 
(4)天グループ

 明王グループと同じく武道派集団。
 「天」とは耳慣れない言葉と思われるかもしれないが、「寅さん」で有名な葛飾柴又の帝釈天、戦の神様の毘沙門天、東大寺の金剛力士も天の一員。

 同じ武道派集団の明王との違いは?
 天は元々インドの神話に出てくる神様で、仏教界の一員ではない。
 天とは、神という意味の、古代インド語(サンスクリット語)のテーヴァが元になっている。天は当て字。

 仏教が広まる前のインドでは、ヒンドゥー教という多神教が信仰されていた。その中には最強の戦士インドラという神や、ブラフマンという宇宙を作った創造神など多彩な神様がいた。インドラは帝釈天、ブラフマンは梵天として仏教に取り入れられていった。

 元々いたインドの神様たちを、仏教を守るガードマンとして取り入れたのが天。いわば正規軍ではないが、外から助けてくれる助っ人外国人のようなもの。

 天はインドの神話に出てくるということで様々な姿をしている。菩薩や如来より、より身近なものがあった。
 たとえば、天の最高位の四天王と呼ばれる多聞天、広目天、増長天、持国天は東西南北に分かれ、如来・菩薩を守ると言われる。足の速さを形容する韋駄天、地獄の王の閻魔様も天の一員。

 そして天はしばしば、御利益によりユニットのように複数で組む。例えば、多聞天が武将の間で人気があるとなると、多聞天はソロデビュー。
 多聞天は戦国時代に名前を変えて活躍した。それが上杉謙信の守り神で有名な毘沙門天。毘沙門天はさらに弁財天、大黒天とともに日本の神様ともユニットを組み、七福神として日本にすっかり定着した。

 以上4グループ以外に、空海、鑑真などの高僧も仏像となっている。

 その年、その時代に合わせ、救いの形を進化させ、日本の民衆に愛されてきた仏像。願いの数だけいろんな仏像がほしい、そんな人間の御利益主義が多種多様な仏像を生んだのかもしれない。

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